アメリカ在住歴が長くなると契約等を取り交わす際は日本と違い各個人のサインが重要になり印鑑を使う必要性が無く、印鑑そのものを持たない事が当たり前になって来ます。

印鑑と云う言葉を聞いた時、あなたはどんなことを考えますか?

日本で銀行口座を開設する時に必用なモノ。

書画の作者によって独自の作品の上に押したモノ。

回覧や宅配の受け取りなどに使われる認印で所謂三文判と呼ばれるモノ。

契約書などの文書において記載事項の誤記を訂正する時の極小さなハンコ。

予め訂正箇所が発生することを前提として、契約書や委任状の文章の余白に押した捨印

ちょっと思いついただけでこれだけの印鑑の種類と用途や意味が有りますが、印鑑と言えば中学の社会科の授業で習って皆さんご存知の通り1784年に現在の福岡市の志賀島と云う島で出土した「漢委奴国王」の金印が日本最古のモノとして有名です。

今回私は日本に住む90歳の母を施設へ入居させる為に約一ヶ月程日本に滞在しましたが、その間幾度となく書類に捺印をする機会が有り、住所変更に伴う届出だけでも市、銀行、医療機関、生命保険会社、公共料金の口座、デイケア施設など、契約書では新施設、銀行引き落としに関する書類等署名の他に捺印と云う習慣が有り、私の様にハンコを押すと云う習慣から半世紀近く遠ざかっていた者はハンコの押し方がきちんと出来ず押印したハンコの一部が掠れていたり、ダブったり、欠けていたりすると情け容赦無く書類は受付を拒否され戻ってきて、再度新たに押印して提出する義務があります。

今回は限られた時間内に取り交わすべき書類にハンコが正しく押されていなければ書類を持って慌てて彼方此方駆けずり回り何とか時間内に完了させなければと云うプレッシャーでヘトヘトになった経緯があります。

母の主治医が出す処方箋に関する薬代金の銀行引き落とし依頼書に押したハンコが一部掠れた様になっていた為銀行から取引を拒否され、薬局の担当者が新たに書類を航空便でアメリカの私の住所に送るので受領次第押印して即送り返す様一昨日Eメールで連絡が入りました。

ロケットが空を飛び、ips細胞が開発され、電子マネー決済が通用するこの時代に、百年以上も前の習慣を日本の政府や金融機関や不動産業者や宅配に到るまでがハンコ下さいと言って書類を持ち回っている事が私にとっては何とも時代錯誤を感じることなのです。

印鑑はもともと中国から日本に伝わって来た文化ですが、その中国でさえ唐の時代には書道の発展を背景として署名が用いられる様になり、公文書や書状に私印が使われる事は少なくなり、その一方書画などに用いる趣味、芸術のための印章が使われ始め印影そのものを芸術とする書道としてのハンコと発展はしても、印章が実用的な日用品として用いられる事はなかったのです。

江戸時代には行政上の書類のほか私文書にも捺印する習慣が広がり、現在の印鑑登録の起源となった印鑑帳が作られ印鑑は命の次に大事なものに例えられ、庶民の財産を保証するものとして非常に重く扱われる様になり日本独自の印章文化が確立した訳です。

それでも明治政府はこのハンコ文化の偏重を悪習と考え欧米諸国にならって署名の制度を導入しようと試みたのですが当時の識字率の低さや事務の煩雑さを理由に反対意見に押し切られ、自署の代わりにハンコを押せば事足りるとの事で現在のハンコ文化へ繋がったのです。

ハンコは100円ショップでも売っていて簡単に入手でき、誤魔化そうと思えば幾らでも出来るわけです。

明治の頃とは比べ物にならない程犯罪が多い現代は誤魔化す技術も高度になり偽印鑑は掃いて捨てるほど有ります。

それなのに何故この印鑑制度を21世紀にもなって続けているのか、世界中で捺印を義務つけているのは日本だけです。

然し乍ら印章は人の同一性を表す為に文書に使用されるものであることから、その社会的信用を保護する為刑法は印章偽造の罪を設けています。他人の印章又は署名を偽造した者は3年以下の有印私文書偽造の罪に問われる事になります。

お宅に印鑑は有りますか? 
最後に印鑑を使ったのはいつですか?
あなたにとって印鑑は必要ですか?

Posted by:ayakopiper